聴こえない悲鳴は夏の空を引っ掻いている。
感情のコスチュームを整えたなら、ゆるぎなき絶望のうちにあるものは放っておく。
(江夏名枝「海は近い」)
gris ciel。服装なんて決まらないから絶望も叱咤も爆発も引き連れて日々、とらえどころのないほつれに惑わされる。窓話されるなら楽しそうでいいのだが、惑星の規模で逡巡はキツい、優しさが足りない、まだまだ。優しくないと伸縮性のある言葉が出てこない。たくさんの他人を媒介にして、ビニールシートを広げるようにバサッと、羽衣の美しさでふわりと布を開いていくような言葉を注射して循環させなければ。
いつものように借りてきたもの。
ベネックス「青い夢の女」。先日観た「ベティ・ブルー」が本当に面白くて、未見だった本作をレンタル。原作は発売時に読んだけど全く覚えていない。「セックス依存症だった私へ」の頃とは違って激ヤセのジャンユーグがはまり役。「ベネックスの新しいミューズ!!」とパッケージにかいてあった女優さんは確かに綺麗ではあるけれど、やはりベアトリス・ダルのインパクトは超えられない。リンチの赤を青にして、「奇妙なサーカス」のオープニングをひとつまみ、精神分析とひっきりなしの煙草とセックス。そんな映画。でも退屈しなかった。
廣木隆一「やわらかい生活」。「ロストシネマ」で紹介されていたので見たくなりレンタル。寺島しのぶに複雑な感情を抱く。感情のグラデーション、その表現力はすさまじく、名優だよなぁと思えど、彼女が男に甘えるような雰囲気を醸し出したとたんにイライラしてしまう。彼女の女臭い部分に過剰に反応している自分が許せないのだろうな。トヨエツの変な文体みたいな雰囲気はもう芸術だな。
パトリス・ルコント「親密すぎるうちあけ話」。借りるものに悩んだらルコント、の法則にのっとって「青い夢の女」同様に精神分析ものを。ルコントの映画は気弱な男が軽い事件に巻き込まれて、そこで愛に目覚めるというのが多いけど本作もそう。フランス映画は、会話時に相手を否定する際のバリエーションが多くていいなぁと思う。口角泡撒き散らして、だけではない否定の仕方。ユーモアやシニカルも含め。あと主役の女性はベレー帽がよく似合ってた。
ロベルト・ベニーニ「マイライフイズビューティフル」。恥ずかしながら未見だった。俳優としてのベニーニは「ダウン・バイ・ロウ」や「ナイト・オン・ザ・プラネット」などジャームッシュの作品で堪能したが、本作はまさしく彼の映画、最高に素晴らしかった。前半のファンタジックさ、そしてナチスの収容所に入れられてからの後半、ともに明るさとユーモアを忘れずに、愛する大切な妻と子供を励まし続けるその姿勢に涙が止まらない。貫き通す、守り続ける。今の自分に足りないものを一気に見せられて心臓が緊張して仕方なかった。
残りの2枚はこれから見ます。
現代詩文庫の新刊に川口晴美があったので驚きながら購入。「EXIT.」や「lives」を擦り切れるまで愛読した身としては本当に嬉しい。
Twitter上で自分も詩を書き始めてから、詩集の読み方が変わった。段落や改行をすごく意識するようになった。本来の自分は、村上龍の延々続く描写のような詩を書きたいと思っていたから、そんなテクニックもないのにダラダラと書いては、その中からエッセンスとなり得る言葉を抽出して再構成するという手順を踏むことが多く、自動筆記のまねごとみたいな書き方をしていた。
しかしそれではもともと薄っぺらな文章なのだから密度や重みが出ない。じゃあ頭から悩んで悩んでこれだ!という言葉や連なりができたら、そこからじっくりと書き進めていく王道的な書き方はどうか、と思って実践していたら、以前に詩人の八柳李花さんからいただいた言葉を思い出したのだ。
「ことばを慎重にためてみてください。一行に苦しみがあって、改行でそれを乗り越える開放的な内在律(リズム)がある。」
この言葉を反芻しながらpw10の連詩を書いてはみたけれど、それが成功したのかどうかはわからない。ただ、つねに戻ってこれる軸のような言葉があるだけで、苦しみながらも助けられている感覚で詩が書けたのがとても嬉しく、次回の番はどんな言葉が自分の中から飛び出してくるのかが楽しみでもある。本の感想や日記の文章などを褒められるより、自分の書いた詩を良いと言ってくれるのが一番嬉しいのは、僕の作風が常に自分の人生を反映させているせいだろう。
自分でもヤバいと思ってはいたけれど、気づけばネットで腕時計ばかり見ている。時間を知るためのアイテムなのに、そのプロダクトの造型ばかりに惹きつけられる。そして仕事用の時計を衝動買い。自分の好きな緑色。ベゼルのグリーンが光に反射する様子を木々の葉のきらめきになぞらえて、明日も川沿いを走って仕事に行こう。
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