I live to fall asleep?


私の生は、今聴いているジャズみたいだと思う。ただし、もっと奥が深い。目眩がするほどぐるぐる回ってどんな秘密の苦しみを私は振り払おうとしているのか。
(アナイス・ニンの日記)



新しい光のほうへ、饒舌に、存在を複写してばらまきながら。「僕のスクーター、君の国へ向かう。君のこと、僕のものにする」と歌った古賀森男の旋律をかりて円環、子供たちが糊で手をべたべたにして作るパーティーの飾りみたいにカラフルな輪っかを天井からぶら下げて、自分にレイを掛けて。病院に運ばれ、空き巣に入られ、洗濯機が壊れても、ほら、まだ生きている。失うと考えると空しくなるから消えたと定義して処世。Can I carry me?is dead my life hold die relax。

アルビノアリゲーター」白い鰐。ケビン・スペイシーの初監督作品。名優と呼ばれる人の監督作には当たりが多い。ゲイリー・オールドマンティム・ロススティーブ・ブシェーミetc。そして我が永遠のミューズ、ジュリー・デルピーの作品。しかしマット・ディロンの純朴な間抜けぶりは最高だ。反比例するようなゲイリー・シニーズの理知的な表情と強靭な意志の宿った目。フェイ・ダナウェイは前に見た「アリゾナドリーム」と同じようにチャーミング。美人ではないけれど時々ゾクっとする色気をフィルムに焼きつける。願わくばケビン・スペイシーも出演してほしかった。もうひとりキャラが立っている人が画面にいると映画自体が色めくような気がした。

「男と女のいる歩道」VIVRE SA VI。好きなように生きるわ、でも殺されちゃうの、それも人生よね。ひっきりなしにジタンを吸うアンナ・カリーナ、その大きな瞳に吸い込まれる。オープニングでの背中を向けたままの語り、その微妙なアップに自分のコンフォートゾーンをまず破壊される。変に傾いだピンボールマシンのシーン。一気に引き込まれて、このスナップショットに詩が添えられたような映像から目が話せない。ゴダールの絵はみんな乾いている。厚塗りされたリキテックスみたいに変則的に乾いていて存在感が半端ない。退屈・意味わからないシーンと目を見張るシーンがうちわの両面に印刷されていて、それを自分でくるくる回しているみたいだ。「裁かるるジャンヌ」を観るシーンでの突然のアップ、その恐怖にも似た恍惚。直後の涙による流れる滝のような激しい浄化。全然関係ないけれど、レオス・カラックス作品でドニ・ラヴァンが初めて人に愛を覚えた時に、その概念がわからずに早足で歩きながら自分の拳を壁に擦りつけて痛みを得ることで表現したシーンを思い出す。全く違う意味で…こちらは喪失感の補助としてか…「トリコロール青の愛」でジュリエット・ビノシュも同じ行動をとっていた。

アルノー・デプレシャンがすごく好きなわけではないが、マチュー・アマルリック週間につきレンタル。例えば何分かに一度定期的に刺激的なシーンが用意されているテンポのいい映画も好きだけど、フランス映画嫌いがよく言う、退屈・ダラダラ長い・意味わかんない・何でそんなに考えてばかりなの・恋とか愛とか言い過ぎ・結局何が言いたいの…みたいな映画が好きなのだ。饒舌に語り、時に逡巡し、他人にはわからない大げさな悲しみにくれ、精神分析医にまくし立てる登場人物たちに限りない愛着を覚えてしまう。今作は2時間以上と長めだが、全く退屈しない。心がイレギュラーを感じるのは主人公の女性のエラの張った前衛彫刻みたいな顔だけで、あとはスムーズに楽しめた。マチュー・アマルリックの、実際に表現はされないが、子どもじみた行動をとっていろんな連中に迷惑かけてきただろう過去も行間から感じるし、精神病棟での女子学生との、本来なら淡い恋心としてフワッと描けるシーンも、その饒舌と猫背と変質加減で台無しに、でもリアリティたっぷりに演じられるていてよかった。カトリーヌ・ドヌーヴ演じる精神分析医に嫌味を言うシーンもわざとらしさが無く、イラついているドヌーブも最高だ。そしてガンで死んだ父の娘に対する思いのエグさ…これには引きまくった…そしてマチューが人生を子どもに語るシーンの誠実さ。デプレシャンは派手な演出を使わずに、でも執拗に心に巣食った言葉を拾い上げる。その加減で彼の映画の良し悪しが決まるのではないかと思った。ラストシーンでのディッキンソンの詩…Twitterで教えてもらいました…がとても響いた。


水は のどの渇きが
陸は 越えてきた海が
恍惚は 苦痛が
平和は 戦いの物語が教えてくれる
愛とは その記念碑だ
もはや渇きはない
2本の脚で大地に立ち
今 私は安らぎのなかに…


過去の自分と比較しても状況的には不幸であるだろう現在、そんな中でも慈しむ気持ちが芽生えて、真新しいホースであの娘に向かって気持ちを注ぐことができているのは誰の悪戯だとしてもいいことだ。秘密の苦しみはもう振り払えたのだろう。


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