「心コレクション」植島啓司

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偶然のチカラ
生きるチカラ

「偶然のチカラ」「生きるチカラ」のヒットが記憶に新しい植島啓司の新作。

100の、心に関する言葉を集めた本書はまず装丁がカッコいい。プレゼントに最適という意見もうなずける出来ばえで、カバーなどつけずに持ち歩きたいのだけど、やはり汚れが気になってしまい、書店のカバーが外せない自分がダサい。

アフォリズム集は、古今東西いろんなものが出てますが、ル・クレジオドン・ジュアンなどに混じって明石家さんまキョンキョン、ピーコなど誰もが知っている芸能人の言葉も収められているので、堅苦しいだけの言葉が並んでいることはないです。引用した言葉のジャンルが幅広く、その言葉に応じた植島のコメントも適度な分量で読み易い。とにかくバランスがいいのです。

ざっと読んだ中でインパクトがあったのはアナイス・ニンのこの言葉。

「私を動かすには二つの道がある。一つはキス。もう一つはイマジネーションだ」

それに対しての植島啓司の文章。

「もっとも肉感的なものと、もっとも実体のないものとが同時に人の心を動かすエンジンとなる。もちろん一緒に働くことがその条件となるわけで、ただのキス、ただの妄想だけではちょっと足りない。そう考えると、キスは想像力が受肉したひとつのかたちであって、もともと別のものではないのかもしれない。kiss、kiss、kiss。」

植島の新書二冊しか読んだことのない方は知らないかもしれないけど、植島の恋愛をテーマにした本はめちゃめちゃ官能的なのです。「分裂病者のダンスパーティ」「オデッサの誘惑」「恋愛のディスクール」などは繰り返し読んだものだ。アナイスニンも、作家ヘンリーミラーの恋人?としてミラーの妻ジューンも含めた三角関係に落ち、自身の日記にその様子を克明に綴っている。まだ絶版にはなっていないはずだが、この「アナイス・ニンの日記」の素晴らしさは半端なく、僕が偏愛している書物の一冊だ。内省の文章、その明晰さ、繊細さに痺れた。野生動物のようなヘンリーミラーとの対比も素晴らしい。こちらもオススメなのです。


BGMは、バンド名はあまりに不穏だけれど、キラキラ輝くポップネスにノスタルジックなフィドルがからむTHE WANNADIESの名曲を。
The Wannadies - The Beast Cures The Lover