スマイソン礼讃
そもそも無理なことだったのだ。iPhoneに情報を一元化しようなどということが。今まで数々のアプリを試した。To doも日記も計画表も詰め込んだ。読書ノートも、ちょっとしたメモや料理のレシピや本からの書き抜きも、手書きツールも全てだ。
だけどもどこか物足りない。保存された文章には奥行きが感じられず、日記も表面的な行為の羅列で、心の奥に潜む言葉の胎児が産まれ出ない。なぜだろう？と思って過去に書き溜めたモールスキンのノートを十冊ほどめくってみると、その時々の時間がノートには刻印されていた。記憶もよみがえった。時期によってメモの方法が違う、インクの色も、ペンも、書き方のルールもみんな違って面白いのだ。文体までも違う。僕にとっては、書いて考え、それを目で見てまた加えて、という行為そのものが必要だったのだ。
iPhoneという文明の利器を得て約一年半浮かれていたが、また、持ち歩く為のノートを用意することにした。そして以前購入したROSA RUGAのロディアケースをまた持ち歩き、メモを取りながら、必要な事項はiPhoneに打ち込んだり写真を撮って保存していたのだが、やはりモールスキンのノートのように、一日を自分の好きな分量で使いながら、一冊単位で残したいと思い、新しいノートをネットで探していたらとうとう見つけてしまったのだ。
スマイソン。英国皇室御用達のブランド。モールスキンと同じサイズのノートが8000円以上する、僕のようなワーキングプアには縁のないノートだ。使っている人の愛情あふれた感想を読むに連れ、自分も持たなければいけないという気持ちが募り、それは短時間で強迫観念に変わり、今すぐ欲しい、手に入れなければ死ぬ！とまで思うようになってしまった。
そして青山に務めている友人に連絡し、暇な時に販売している青山ヴァルカナイズに行ってそのたたずまいを見てきてくれとメールしたら、タイミングがよかったようですぐに出向いてくれ、購入してくれたのだ。値段は約12000円。意味わかんねー、モールスキンの10倍！と思ったが、自分は車にのバイクにも時計にもマンションにも興味が無いので、えいやっと買ったのである（お金はまだ払ってないけど）。
来週取りにいく予定なので、使用感などの詳細はまた書きます。まずはこの雰囲気、そして控えめに刻印されたメッセージの優雅さを感じ取っていただければ嬉しいです。
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