新都市論TOKYO

建築関係の本が好きだ。建築家が書いた自伝や建築論、海外の建築物の図版、そしてちょっとおかしな部屋の間取り集などなど、時々集中的に読みたくなる。建築や都市について何か新しいことを知りたい、というよりかは、それらを引き金にしていろいろ考えてみたいという欲求のあらわれかもしれない。

そして建築について考えてるうちに、じゃあ今自分がいるこの街はどうなんだろう?何が好きでどこが許せないのか?いつの季節が一番過ごしやすい?街の雰囲気は?それは無機的か人間的かそれともどちらでもない?などと意味不明の自問が始まる。

さらにそこから、自分が小さい時に住んでたアパートはボロボロだったなぁとか、小学校の集団登校の時に、近所に住んでいた婆さんがいつも灯油缶でたき火をしてくれてた、なんて記憶がよみがえる。今すぐ出て行って!もうあんたとは一緒に暮らしたくない!と言われて午前3時に追い出された後、悲しみにくれて歩いた川沿いの道の砂利や草を踏みしめる感触、その空気感なども今ではいい思い出だ。現在から過去に遡って自分を振り返るとき、その時々住んでいた街の残像は必ずついてくる。

建築家の隈研吾とジャーナリストの清野由美が、21世紀を象徴する5つのスポットに実際足を運び、様々な意見を交わす。5つのスポットは汐留・丸の内・六本木ヒルズ・代官山・町田だ。

「買い物は、ネットショップか老舗の本店まで足を延ばそうかという時代に、中途半端な店が集積した大規模商業施設は本当に必要か?」と隈研吾が汐留を評すと、清野も「てんでばらばらで、何度歩いてもハッピーになれない」と返す。論理的な隈の意見と、清野の女性らしい感覚的な物言いがうまい具合に掛け合いになっている。

こんな調子で都内のスポットを実際に歩きながら話される会話に、知的興奮を覚えずにいられない。町田駅前の雑多な雰囲気を「血圧が高くて下手すると熱病に感染しそうな勢いですね」と描写しているが、奇しくも夏の入り口、本書を携えて各地に赴き、熱病に冒されに行くのもいいかも知れない。




BGMは祝祭的リズムと躍動感とアンチテーゼを込めて!!
無機質な街並とファスト風土はいらないぜ!!
SOUL FLOWER UNION『神頼みより 安上がり』