「タフ&クール」長谷川耕造

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ZEST、モンスーンカフェ、ラ・ボエムなどを展開するグローバルダイニング社長の自叙伝。本書のプロデュースを社長の同級生であるフランス文学者の鹿島茂がやっている。

東京に住んでいる頃には度々お世話になったレストランについての本なので、かなり楽しく読めた。僕がよく行っていたのは四ッ谷三丁目のラ・ボエムで、店内の雰囲気も接客も良く、料理も合格点だった。イカのフリッターとタコのカルパッチョはいつも頼んでました。酒飲みなのでメインディッシュよりも前菜ばかり食べていたような気がする。結局完全禁煙になってからは行ってないのですが、せめて分煙だったら、横浜中華街の店舗に行ってみたいな。

しかし題名にあるように何てタフな男なんだろう。喧嘩っ早い中学時代。いろんな芸術に触れ、文化的素養を獲得した高校時代。ドロドロのインスタントコーヒーを無理矢理流し込んで死ぬほど勉強した浪人時代。そして僅か二年でドロップアウトすることになる大学時代。さらには家出して友達の家を転々とする日々、そこで金を貯めてヨーロッパを放浪し、フィンランド人の女性と恋に落ちる。そして日本に戻り会社を立ち上げたのが23歳。激しく、スピーディーで、生き急いでいるかのような行動力。この自伝部分だけでも相当にエネルギッシュで面白い。ここまでで約1/3の分量だ。

そして最初の喫茶店「北欧館」から始まり、試行錯誤を重ねながら会社を拡大させていく様子が目まぐるしく展開する。失敗も多くあり、壁ににぶつかってはそれを乗り越えていく。その過程も描かれているので、ビジネス的にも役に立つ部分がたくさんある。効率化を追求したのちの人事考課システムや、その真逆であるかのような人情的な話まで、全てが逸話と見まごうような話ばかりで飽きない。

若き起業家が辿った道筋を余すところなく伝えている、しかも半端ない熱量でもって。野心のある若い人に読んで欲しい本だ。僕は単行本発売時に読んでいたけど、文庫化をきっかけに買ってもう一度読んだら見事にハマって午前様。

行き詰まったら常に戻ってくるべき本になりそうだ。


確か三宿のボエムはホラ穴のような内装で、大人の雰囲気に満ちていたいた気がする。映画「キリングゾーイ」でアングラードが黄色いジャケットでjazzを演奏したいかがわしくも猥雑なバーに似た。色気のある男たちが夜に集う場所で鳴っているのはこんな音楽だろうか。
Dave Stewart and The Spiritual Cowboys - Jack Talking