「サラリーマン合気道」箭内道彦

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近所のミスタードーナツが朝7時から夜12時までやってるのを始めて知った。今日5時に起きてしまったので、仕事前にブログの記事をひとつ書こうと思って、早朝からやっている喫茶店を探していたら見つけたのだ。コーヒーのおかわりも自由だし、きちんと分煙されていて席の間隔も広いから落ち着く。ベローチェを卒業してこれからはミスドを常宿にしよう。

金髪で派手な衣装、原宿の裏通りにある「風とロック」という会社の社長で元は博報堂広告屋。TVにも時々出ていて、赤字続きのフリーペーパーはよく書店のアートコーナーに置いてある。飄々とした風貌でフラフラしてそうな感じがする。ちょっとスナフキンぽい。

そんな箭内道彦の仕事術が文庫化した。単行本でもってるけど、あらためて買って読んだらやはり面白い。前に読んだ時の環境と今の環境が全く違うから、響く箇所も違うのだろう。

Amazonより目次の抜粋です。

1 発想の自然体を取り戻す九つのヒント(アイデアは書き留めない・「みんなと同じ」を恥じない  ほか)

2 仕事と自分の気を合わせる十二のテクニック(積極的に緊張する・うまく話そうとしない、目を見て話さない  ほか)

3 人間関係の常識を逆手に取る十二のポイント(できるだけ会社にいない・同僚と仲良くしない  ほか)

4 自分自身を脱力させる十二のメッソッド(ルールと制約を歓迎する・プライドや個性を進んで捨てる  ほか)

こうして見てみると、世に出回っている自己啓発本とは真逆のトピックが並んでいます。最初に目次を見たときは、さすが広告屋、興味を惹くためのコピーライトは上手だねぇ、などとハスに構えていました。

しかしそれは僕の偏った見方でした。インタビューで彼は「この本は20代から30代、デザイナーでありながら自分の個性がわからず焦っていたその頃の自分に、それでも面白いものは作れるよ、と言ってあげたかったんです」と語っています。苦労していた自分への労いの言葉。そこには優しさが多分に含まれています。

この出発点の違いが他の自己啓発本と印象が違う最大の要因ではなかろうか、そう思います。これをやれ!あれをやれ!みたいな付け足し型の、それによって無くなるばかりの時間を今度はHACK系の本で補って凝縮し、エンジンの回転サイクルをひたすら上げていくようなライフスタイルとは縁遠い。

あとは自分の失敗談が多く記載されているのも、なんだか安心感があります。

こういう失敗をしました

馬鹿だなーオレ

じゃあちょっと見方を変えてみる?

いや、そのままでいいんじゃない?

でもなぁ、このままじゃチョットツラインダよね

まあ今日は寝ちゃおうかな

そうだね、明日になればまた良い案が浮かぶかもしんないしね

上記の記述が本書にあるわけではないけれど、こんな緩い感じのトークが行間から滲み出ているのです。金髪にする前の箭内とした後の箭内が横に寝そべってダベっている映像が自然と浮かんでしまうんですね。

「おっ、とうとう脱色しちゃったんだ」

「うん、金髪にしたいって思ってたじゃん、まずはその気持ちにアクセル踏んでみたんだ」

「おーっ。でもボーナスの査定に響くかもよ」

「そうなんだよね、だからちょっとだけブレーキ踏んで、冬のボーナス貰った次の日にやったんだ」

まあ僕の妄想ですがこんな会話も響いてくるのです。「自分の気持ちにちょっとだけアクセルを踏んでみる」という感じが凄くフィットするんです。おどおど、うじうじしてる自分を認めながらも、そのままでいいから前に進んでみること。

1トピックで4〜5頁、各トピックの最後には要約の格言がのっているので、そこだけを読み直したりもできます。

「うまく話そうとしなければ、おのずと相手との相性がわかる。無理のないコミュニケーションで、自分にとっての最適の場所を見つけること。」

「優先順位をつけないことで、仕事は有機的に結びつき、密度を増していく。」

「将来のためのマイレージと考えることで、失敗はぐっと付き合いやすいものとなる。」

「自分から謝り、進んで無防備になることで、建設的な話し合いをはじめることができる。」

数を上げればきりがないのですが、弱さを補うための(克服する、とは決定的に違う)記述が親近感を覚えるんだろうな。小さい頃、隣近所にいた面倒見のいいお兄さんをふと思い出しました。


BGMは箭内のフリーペーパーにもよく出てくるサンボマスターや銀杏BOYSかなぁと思ったけど、それよりはもう少し緩い感じがいいよなとiPhoneをいじってたら、多分これドンピシャっていうのが見つかりました。

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