「歌うクジラ」村上龍

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iPhone版「歌うクジラ」村上龍。ようやく発売になった。文芸誌で連載されていたのだが、一節たりとも目を通してなかったので、ストーリーや文体がどんなものか全くわからなかったが、村上龍ほどのビッグネームが出版社から書籍を出すより先に電子書籍で発売するということがかなり話題になっていたので、迷わず購入。クールな表紙と坂本龍一の音楽、各章の扉絵が見事にマッチしている。値段は1500円、オール横書きで、その辺が納得いかない人も多数いたようだけど、僕は大丈夫でした。ペイラインは5000ダウンロードと発表されていたけど、そんな数字は軽く超えるでしょう。

内容説明(オンライン書店bk1より)

不老不死の遺伝子を持つSingingWhale=歌うクジラの発見が世界を一変。時は22世紀、15歳の少年の体内に埋められたチップから冒険が始まる。『下巻』同時刊。

大風呂敷広げたなぁ、ちゃんと収集つくのだろうか?と思うが、どんなに批判されようとも、常に時代の最先端で起こっていることを意図的にテーマに選び、書いてきた村上龍のことだ、きっと大丈夫だろう。SFの設定を借りたパラレルワールドものになるのだろうが、気になるのは描写力だ。メタリックな質感を伴う描写をさせたら今でも村上龍に敵うものはいないと思う。その描写力が、「コインロッカーベイビーズ」「イビサ」「フィジーの小人」のようなものであって欲しい。「五分後の世界」「半島を出よ」もよかったのだが、こちらは、戦争・戦闘シーンの描写には目を瞠るものがあったが、村上龍独特の、抑制された、的確な表現力が醸し出すメタリックな感じが少した足りなかったのだ。

第一章を読んだ限りでは、先が凄く楽しみだ。描写力はまだ判定できない。15歳の少年が主人公なので、むしろその冒険・成長譚に期待。少年が成長して大人になる過程、特にその観察眼のするどさがストーリーをグングン進めて行く素晴らしさは「コインロッカーベイビーズ」で証明されている。それから相変わらずネーミングも上手い。かつて「向現」という、これ以外にハマる語句は絶対にないなと思いながら「ヒュウガ・ウィルス」を読んだが、今回はいきなり「クチチュ」だ。このセンスに脱帽するばかり。

もうすぐ書籍版も発売されるが、そっちも買ってしまいそうな気がする。