「この世でいちばん大事な「カネ」の話」

貧乏は苦しい。僕も金のない家に生まれたのでその苦しみはよくわかる。他の人と同じものを持ってないだけで感じる負い目や引け目。子供心にきつかったことを今でも思い出すことができる。クーラーなどない家。狭すぎるボロアパートにはまともな寝床などなく、弟と僕は押入れの上下を二段ベッドにしていた。貧乏でゴメンねといつもあやまる祖母、そして酒浸りになって怒鳴り散らす父親。

そんな環境で育ったものだから、高校を卒業し、就職をして始めての一人暮らしをしたときの自由さったらなかった。窓から差し込む光、ベランダにたなびく洗濯物、錆び付いた手摺り、調子の悪い給湯器など全てが自由の証明だった。それから20年、結婚もせず子供もおらず、こうやって自分一人、好きなことをしながら生きてきて思うのは、当たり前だけどお金って大事だなということだ。細かく話そうと思えばどこまででも細かくなってしまうので詳細は割愛するが、時給600円台から年収何百万まで様々な待遇で働いてきた。みんなと同じだ。20年トータルで考えれば普通以下だろうな、確実に。

ベストセラーになった本書がこうやって文庫になれば、より多くの人に手にとってもらえる可能性があることがまず嬉しい。僕が単行本で読んで真っ先に思ったのが、もっと早く読みたかった!ということだったので。特に若い人に読んでほしい、そして感想を聞きたい。

本書はお金の話をベースにした西原理恵子の自伝です。自伝とは名うってないけど、随所に自分の体験が語られ、特に第一章の記述は面白さと優れた考察がミックスされていて夢中になってページをめくった。その後も夢を掴んだ西原理恵子を襲ういろいろな出来事に彼女は翻弄されたり、立ち向かったりしながら生きていく。その中で考え、実践してきた「お金」に対する付き合い方が、泥臭く、けれど本質をついたメッセージで読み手に迫る。身をもって実践しているからこその言葉の数々、その名言がぐさりと突き刺さる。

「貧しさは連鎖する」
ーー確かにそうかもしれない。日常の思考、発想のスタートが身の程から始まってしまうから。コンフォートゾーン。自らリミッターを設定してしまう。もっとたくさんの意味を含んでいるけれど、詳しくは読んでみてください。

「自分の得意なものと、自分の限界点を知ること」
ーー若いうちは限界を考えずに突っ走りがちで、僕もそうだった。限界点がきちんとわかってないと間違った方向にエネルギーを費やしたり、もともと無理なことに挑戦して失敗しくよくよ悩んでしまう。

「マイナスを味方につけなくちゃ」
ーーなかなか素直に聞くことは難しいかもしれない、現実の世界では。お前に言われたくねーよ!とか思ったりしましたもん。

「いいじゃない、お金にならなくっても。と言っているうちは現実にうまく着地させられない」
ーー頭の痛い話だけれど、きっとそうなのです。小さなところからでもいいからお金に変えていく、マネタイズを意識していくところから始まるのですね。今では良く分かるし体にも染み込んでいるけれど、ノリや満足感で活動していた時期がありました。好きなことやってるんだから俺シアワセ!キラキラしてる!みたいなね。

「たまたま配られた札が全部マイナスだったらそれをいつまでも嘆いていたってしょうがないよね。ひっくり返してプラスに変えることを考えなくっちゃ」
ーー文句ばかり言っててもしょうがない、もう生まれちゃったんだもん。そして育ってしまったのだから。過去を責めたり、人を責めたりしても何も解決しないしね。たまたまくばられた札、という言い方は人にとっては頭にくるかもしれないけど、僕はすごく関心したな。軽く感じる。ふうっと吹いたらひっくり返りそうじゃないですか。

「自分探しの迷路はカネという視点を持てばぶっちぎれる」
ーーホリエモンも同じようなこと言ってたな。くよくよ悩む暇があったら動け!独立しろ!どうせあんたには何も失うもんなんかないんだから!みたいな言い方で。

「自分から動いて何かを知った人間は、そこから何かを始めることができる」
ーー経験、というか体験値が上がっていくと、次の行動の選択肢を増やすように思考が始まるのですね。

まだまだたくさんの名言があるのですがこのあたりで。全身で、体当たりしながら生きている西原理恵子の本書を中学や高校のテキストにしたいぐらいです。本当のことを伝えることって大事だし、今の時代において特に必要とされていると思うので。本当に名著だと思いました。


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