「ピピ嬢の冒険」古川沙織


トーキングヘッズ叢書で見るたびに、このイラストがまとまって一冊の本になればいいのにとずっと思っていた。肉体的魅力を全面に出したいやらしさではなく、痛々しさとセットになった絵は、その特集の内容と相まって激しく心に突き刺さる。そして願いは届いたのか、こうやって本になり、僕のコレクションに加わったのだ。

内容紹介(Amazon
無垢な身体を虜にした果てしなき甘美。
禁断の木の実を手にした罪深き少女たちのエロスの恍惚郷!
サドなどのフランス文学に傾倒し、緻密なペン画で過剰かつ頽廃的なエロスを表現してきた、古川沙織待望の初画集!

ただ消滅の、秘匿された消滅の香りだけが後に残される。ほかには何もない。千切れ雲ひとつ。
なぜならエロティックな衝動はいつも何ものでもないもの、誰でもないもののなかにあるのだから。
――解説:鈴木創士(作家、フランス文学者)

画集にしては小さすぎると思いながらページをめくると、薔薇の刺が自分の顔めがけて飛んできて刺さりその場で花を咲かせたような、圧倒的に過剰で濃密な絵が目を濡らす。焦る。うつろな目をした少女はこの小さなフレームに閉じ込めておかなければならない。これ以上大きければこの部屋を乗っ取られてしまいそうだから。

細密なペン画による、その影、角張った臀部に間接をもった少女たちは、恍惚にうち震えているのか。いや、魂を抜かれて人形になる直前の、絶命の声をあげているだけではないのか。

モノクロもカラーも収録されているが、カラーとはいえくすんだ色調だ。まるで絵の具を溶いたのは自分の血なのよとでも言わんばかりに。
アングルや構成などに金子國義との類似も見てとれるがそれが何だっていうのか。

恍惚と死の舞踏はある意味では祝祭的なのだ。大きな扉で閉ざされた地下室で少女たちは、昼夜もわからないままパーティーに耽っている。


BGMは戸川純のこのカバー曲を。太鼓の音は心臓の鼓動か、それとも絶命の合図か。
戸川純-ラジオのように Comme à la radio


ピピ嬢の冒険〜L'aventure de Mademoiselle Pipi (TH ART SERIES)

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