「ガールフレンド」しまおまほ

アイドル・かたづけ・結婚・恋の空気・夏のお葬式・付き合う・家事・三十歳・クリーニング屋さんの閉店・・・本書「ガールフレンド」、そのタイトルはいたってシンプルだ。おっ?元オリーブ少女なのにあまりキラキラしたトピックがないじゃないの。

内容もその通りで、友達と飲みながら結婚について話したり、男友達の彼女とまつげパーマをかけにいったり、宇多田ひかるの妙齢感について電車のホームで考え込んだりと、等身大の自分が体験したことについて率直に語っている。あとは幼い時の話。小中高、予備校時代のこともたくさん書かれている。筆致はおだやかで、まるで女友達の近況報告や思い出話をスタバで聞いているかのようだ。

うーん、こりゃ最後まで読通せないかなと思ったが、意外にも最後までするすると読んでしまい、しかも面白かった。大きなどんでん返しや、アフォリズムめいた教訓も特にない。では描写がするどくて表現力にたけているかといえばそうでもない。付箋を貼った箇所がほとんどない。なんでだろう。

例えば何人かの友人たちと飲みにいって、軽く盛り上がって自分もきちんと話に参加できていてそれなりに楽しんでいるのだけど、ふとしたはずみで気持ちがその場所から離れて、別のことをふらっと考えたりしてしまうことはないだろうか。そのふらっと考えていることに強くのめり込むわけではなく、ちょっと〜君!ちゃんと聞いてんの?あっ、ごめんごめん聞いてるよ、でまたすぐ話に戻れる感じ。でもまたべつの瞬間にはふと違うことに思いが寄っている。そんなちょっとした気持ちの変化、外部とつながっていながらも自分の中身を覗き込んでいる状態。

この本から受ける印象はそんなものに近いのかなと思う。そこが好きな理由だろうか。あとは10代の学校生活についてはそのやりとりがからっとした会話文になっていることも多く、学生時代の記憶がほとんど記憶に残ってない僕としては、そのやりとりをうらやましく思ったこともある。唯一記憶にある校舎を思い浮かべながら、彼女の記憶を自分のスタジオで再生してみる。なんとも淡く、心地いいじゃないか。

【今日の一曲】
ゆっくりと情景が立ち現れてくるのがこの本に近いかなと。あとは「夢」というキーワード。
曽我部恵一BAND 夢見るように眠りたい

ガールフレンド (P‐Vine BOOKs)



↓PLEASE CLICK ME!!
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
人気ブログランキングへ
Twitter