彫刻の森美術館


アートのジャンルの中でも、一番興味がわかなかったのが彫刻の分野だった。ロダンの考える人が有名だと思うけど、幼い頃から何度もTVや本で見ていれど、心を揺さぶられることは一向になかった。

なんで箱根彫刻の森美術館に行こうと思ったのか、自分でもわからない。ただ距離を移動したかったにすぎない。阿佐ヶ谷から藤沢に引っ越して2年。静岡方面が近くなったにもかかわらず、伊東や下田、三浦海岸、箱根などの観光地に行ってなかった。ビュフェ美術館のある三島と、その帰りに途中下車した熱海だけだった。

なので箱根に行ってみようと思ったが、温泉でゆったりする、ということにあまり魅力を感じない自分としては、日帰り温泉なども興味がない。だから唯一好きなアート、美術館ということで彫刻の森になったのだ。

小田原から登山鉄道、ケーブルカーと乗り継いで現地に向かう。小田原の駅からは乗車しているほとんどの人が年寄りか外国人だった。温泉地っぽい布陣だ。とたんに観光地に来たのだという実感がわく。

電車が一駅止まるたびに標高が上がっていく。気づけばゆっくり進むケーブルカーからの眺めに心奪われている。勾配を上がっていく新鮮な感じ。見所に差し掛かると社内アナウンスで教えてくれる。

そして美術館へ。むかし、彫刻の森美術館のTVCMが深夜に流れていて、その音楽が怖くてしょうがなかったのを思い出す。ゲートをくぐると、高台から山の斜面がパノラマに広がり、一気にテンションが上がる。標高1000メートルもいかないが、いきなり寒い。CMで印象的に映っていた、両手両足を広げたたくさんの人が連なる彫刻は出口付近にあった。

そしていろんな彫刻を見ながら散歩する。秋晴れの快晴だったので冷たい風も心地よく、普段はとらない写真もバシバシとりまくる。彫刻家の名前や作品は知らないものばかりだが、どの作品にも重厚感があり素晴らしい。その大きさ、ブツとしての存在感、想像する重量、ああこれが彫刻の世界なんだと体感する。

園内にはピカソ館が別途あり、ピカソが好きな方は嬉しくてしょうがないかも。その他、子供用だけど、アスレチックのように登ったりぶら下がったりできる展示もあり、こりゃ子供達は楽しいだろうな、思いっきり走っても大声でキャッキャしても大丈夫だし景色はいいし、何だかわからない彫刻がそこここにあって目まぐるしいし。

そしておみやげに草間弥生のTシャツといろんなポストカードを買う。ピカソのポストカードは年代順に100種類以上販売されていて、それを眺めているだけでもピカソの創作スタイルの変化が見てとれる。これもピカソなの?というものを数枚手に入れて嬉しくなる。普段の買い物に比べて、アートグッズを買う時の心持ちは他の何にも比較できない喜びがある。芸術というおよそ役に立たないもの、しかし心の動かされ方は異常な、この芸術を自分の生活に参加させること。

そして別館の展示でジャコメッティを発見する。彫刻に興味が無くとも、あの大作「エクリ」に刺激された者にとってはジャコメッティの名は特別だ。ひょろっと長い、心もとなく天に吸い込まれていくような極限のフォルム。この「腕のない女」にしばし見とれる。TELEVISIONの「ビーナス」が脳内で再生される。そしてその曲が引用されるスティーエリクソンの小説も頭をかすめる。ビーナスの腕に抱かれた〜、その逆説的な意味。

見事にあてられた。近々世界堂で粘度を購入するだろう。およそ彫刻ではないが、自分の手を使って立体的なブツを作り上げること、それがどんな気分の高揚をもたらしてくれるのか、今から楽しみだ。

時間がまだあったので、交通費はかかってしまうけれどそのままケーブルカーに乗ってさらに上へ。途中からはロープウェイに乗り換え芦ノ湖を目指す。小学生の時に大湧谷にきたことを思い出すが、硫黄の匂いが再生されるだけで、その景色はよみがえってこない。

しかしロープウェイのあの怖さ!年をとるごとにジェットコースターなんかも怖くなってきた自分としては、ただロープにぶら下がっている状態が怖くてしょうがなかった。そして左右にぐらんぐらん揺れる機体は隙間からビュンビュン風も入ってくるし。乗り合わせた8人のお客の中で元気だったのは子供とタトゥーの入った外人の兄ちゃんだけだった。

そして芦ノ湖。山の中にこんなだだっ広い湖があることが驚きだ。中国の奥地、枯山水みたいだ、とまではいかなくとも異様な静寂に包まれている。湖を囲むように道路が走り、周囲は約19キロ。ぜひこの周りを自転車で走ってみたかった。今度輪行しようかな。ロープウェイの終着地から船に乗って箱根の中心地へ。

帰りは箱根の山を下るので、バスにしてみた。行きはもろもろ含め2時間ほどかかったが、バスだと小田原駅まで40分ほどで少し拍子抜け。でもあのうねうねとカーブが続く道はスリルもあって走りがいがあるのだろう。自分は免許を持ってないけれど、この下りを是非自転車で走ってみたい。

バタバタと駆け抜けた一日だったけど、11時に出て、夕方7時前には家に着いた。意外とコンパクトに楽しめたみたいだ。車があって温泉が好きで彫刻にも興味ありありよ、とい人にはオススメです。


【今日の一曲】
ジャコメッティから想像させられたTELEVISIONの「ヴィーナス」を。未だ色あせない普遍的な名曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=4f3d5ZdE4vY&feature=related

表紙のインパクトも素晴らしい本書は芸術とともに生きたジャコメッティの全てがつまっている
ジャコメッティ/エクリ
アルベルト ジャコメッティ Alberto Giacometti

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このソリッドな音、メタリックな声、神経がむき出しになったような曲の数々。
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