BRAVE SONGミーティングツアー「光の葡萄」


前に行ったライブの感想のツイートが途中で終わってしまったので、こちらにまとめます。途中まではツイートのコピペです。

ポエトリーリーディングのパートはこちらで見れます。映像がとてもキレイで、僕もちらっと映ってましたね。
http://blog.bravesong.com/?eid=825879


ライブは彼のポエトリーリーディングから始まった。暗がりに近い、人肌のような優しい照明の下で。どんな詩なのだろうと思って聞けば、それは詩のようであり、短編小説でもあった。

その落ち着いた声のトーン、白いTシャツに革ジャン、ブーツ。暑かったら革ジャンを脱いで肩にかけりゃいいさ、とでもいうような、ロスからラスベガスまでの砂漠の一本道を3マイル歩いてきたかのような風体でかっこいい。ポエトリーリーディングの場に相応しいアメリカン具合。

詩はといえば、日常のスケッチが多かった。アメリカの詩のようだった。登場人物がいる、何かをしている、そしてどうなったか。難解な言葉など使わずに、風景を切り取っていく。カーヴァーやブローディガンを思い出した。そしてそれが退屈かと問われれば、そうではないのだ。

リーディングの素晴らしさ。それは声に乗って物語が立体的になること。だから難解な、イメージを羅列したような、普段僕が好んで読むような詩よりも、彼が読んだ日常的なエピソードをギュッとハードボイルドにしたような詩のほうが良い。口伝えのお話がこんなにワクワクするなんて。

彼の語り口のせいもあり、僕は、でどうなったの!と次を心待ちにする少年みたいな気持ちだった。もちろんアイロニカルだったり、そこで終わっちゃうの?というものもある。物語ってはいれどやはりそれは詩と呼ぶしかない、きちんと質量をもった作品だったのだ。

リーディングが終わり、最初のバンド「ダニースミス・プロジェクト」が登場。トラッド、カントリー、ゴスペル、フォーク等の英米ルーツミュージックへの憧憬を昇華して、独自の方法で表現する。バイオリン、バンジョー、ハルモニウムなどの楽器が奏でる曲に一発目から心を鷲掴みにされた。

ポーグスを、トムウェイツを、ダニエルジョンストンを、ピアソラを、ビリージョエルを、ジョーヘンリーを、その他たくさんのミュージシャンを思い出す。曲がいい、演奏が上手い、各楽器のバランスも完璧だ。囁くようなボリュームでの演奏もちょろいのではないか。

特にバイオリンの正確さには下を巻く。一切ぶれない。トーンコントロールも完璧で、バイオリンならではの繊細な表現を堪能した。一曲聴いてもうCDを手に入れることを決めた。「踊ろうマチルダ」同様に、ちょっと聴いただけで全身でファンになることを切望して勝手にゾクゾクしたのだ。

そして再び彼のリーディング。今度は短編小説を読む。この短編は音楽をモチーフにしたもので、その中に出てくるマヘリア・ジャクソンの曲を実際に、リーディングの途中で流すというもの。面白そうね!と軽く思っていた。その「軽く」は数分後になかったことになる。

トラブルを抱えたワケありのカップルが、こんな時こそ外出、あなたの好きなサッチモが近くのジャズフェスティバルに来るそうよ。ということで出かけるお話だ。

カップルは旅先で喧嘩してしまう。そして仲直りのSEXをするが、そのまま眠ってしまう。サッチモは?もう終わったわよ!何で起こさなかったんだ!何度も起こしたわ、でも起きなかったの!何てこった・・・

そんなやり取りがある中、外からマヘリア・ジャクソンの音楽が聞こえてきて、2人もその歌に引きこまれていく。

そして実際に会場内でマヘリアの曲がかかる。物語の2人にを想像しながら実際に聞くマヘリアの声。その、地鳴りのように逞しくも、天上から響くアリアのようでもある圧倒的な包容力に身をゆだねていると、胸がじわじわと熱くなり涙が溜まる。酒を飲んでいたせいもあるけれど、身体が共鳴して指先が震える。感動の渦、というものがこれなのかと煩悶する間もなく、ただ目を閉じて聞き入っていた。

そして僕と同じように曲に聞き入っていた2人はどうなったか。その最後までは明かされない。僕はアンハッピーエンドではないかと思っている。その最後の最後でマヘリアの歌を2人に聞かせた作者の気持ちを思う。

そしてトリのバンドTWILIGHT SETの演奏が始まる。ギター・ボーカル・ペダルスティールという布陣。

【かつてザ・バンドが、プリファブ・スプラウトがそうであったように「アメリカ人によらないアメリカ的な音楽」の醍醐味を感じさせる名盤。ライ・クーダーのサントラのような荒涼感と適度な湿気を持ったケイのヴォーカルの絶妙な調和が耳に心地よい。】

アルバムの紹介にもあるように「荒涼としながらも適度な湿気」がある曲の数々は、エバーグリーンと呼ぶしかないような、自分の心に走る様々な琴線のレール、その1本を既に、確実に担っていた。しかもCDだとより、その繊細さがしみてきやすいというおまけつきだ。実際ライブから10日経つが、僕は毎日必ず、何回かこのアルバムを聞いている。1曲目の「DESERT SONG」のイントロが流れるだけで体の力が抜けていくのを感じる。

会場のバーも、リーディングも、出演した2バンドも、全てが自分の心に作用した夜。

願わくば愛する女性とともに訪れたかった。彼女が、ダニースミスプロジェクトの音楽で心弾ませ、物語の朗読とマヘリアの圧倒的な声に心震わせ、TWILIGHT SETの曲で甘い夜に向けてソフトランディングするような場面を夢想し、そんな彼女の美しく心が揺れる様を眺めていたかったが、僕にはそんなパートナーはいないのだった。

大塚さん、呼んでくれてありがとう。最高の夜だったよ!

TWILIGHT SET
http://twilightset.com/

THE DANNY SMITH PROJECT
http://www.dannysmithproject.com/

BRAVE SONG
http://blog.bravesong.com/

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