マックス・エルンスト「フィギュア×スケープ 時代を超える像景」横浜美術館


横浜美術館は相性が悪いんだよなーと思いつつも、大好きなマックス・エルンストの展覧会「フィギュア×スケープ 時代を超える像景」が始まっていたのでいそいそと出かけて行った。

マックス・エルンストはダリやマグリットと共にシュルレアリスムを代表する画家として知られているけれど、擦り出し(物の上に紙を置いて擦るやつ。フロッタージュ。)とか切り貼り(コラージュね)などいろんな画法を使った作家でもあります。

チラシによれば、ドイツロマン主義文学を愛し、物理、天文、幾何学にも深い関心をよせていたみたい。今回の展示は油彩、コラージュ、版画、彫刻など全部で約130点での構成だ。これは後で知った数なんだけど、結果から言えば、少ねーよ!!

僕の場合は、美術展、特に絵画中心の展覧会を見る時には、まず全体を早歩きに近い速度でざっと一度見て、二周目で心に引っかかったものを中心にゆっくり見る、というやり方なんだけど、今回は残念ながら1時間もいなかった。

内容が良くないわけではないけれど、あまり引っかからずにスルッと終わっちゃった感じ。展示室の形や広さのせいもあると思うけど、シンプルで単調な展示方法をとっていたからかも。

もともとそんなに色を多用する作家じゃないから、他のお客の後ろから遠巻きに見てもあまり視界に飛び込んでこないんだよね。

とはいえ文庫本にもなっている「カルメル修道会に入ろうとした少女の夢」の原画は、一枚一枚の完成度がやはり高く、見ているだけであの細密な版画の世界に吸い込まれて行きそうになるし、「鳥籠はいつでも想像の産物」と彼が言うように、鳥や鳥籠をモチーフにした作品は、大きさも絵の感じもそれぞれガラッと違っていて、この作家の多様性を浮かび上がらせている。

それから、「流行は栄えよ、芸術は滅びるとも」のシリーズは、透視図のような幾何学的な図形と、数字や文字を組み合わせたもので僕は大好きなシリーズ。背景の茶色(何か独特な色調の茶色)も含めて、何か宙づりにされたような気分になった。

そして、相当昔にあった公募展「東京アーバナート」に僕も出品していたんだけど、その時大賞をとったイラストレーター、サダヒロカズノリに何だか似ているな、とも思う、ふと。

さらに、「少女が見た湖の夢」は、鬱蒼とした森の中、木々の中に生き物を忍ばせている。その一体感が素晴らしい。椰子の枝のような流れる線描に感じ入る。

「マクシミリアーナ、あるいは天文学の非合法的行使。」のシリーズ、どちらかと言えば文字をデザインのように使ったグラフィックアート?の数々が刺激的で、文字とイラストの配置によってどこまでもコズミックな空間を捻出できるのが凄い。文字の並びを三角や四角、あるいは柵のように配置して、例えばその柵の中に人物を配置する。これだけで劇的に、世界が複雑に立ち上がってくる。iPhoneのメモには、日本語でできるか試してみること、と打ってあったw

総合的には、過去に見た作品もいくつかあったので、ちょっと物足りないというのが本音。もしくは展示方法を変えて、展示室を3つではなく2つにしてアクロバティックに圧縮して並べた方が、この作家の複雑さがより見えてきたんじゃないかと勝手に思う。

ただ、あまりエルンストに親しんではいないけど昔から興味はあったのよ、という方なら楽しめるのではないでしょうか。横浜美術館は常設が素晴らしいので、それも一緒に見れますから。ダリとかフランシスベイコンとかね。

それから常設展のいくつかは写真OKでした。音が出なくて、単品の写真でなければという条件つきではありますが。
こちらはハンス・ベルメール
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これはダリですね。
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