文房具を買いに

iPhoneを手に入れてからというもの、今まで愛用していたモールスキンの ノートは全く開かれなくなってしまった。

ノート、手帳の類いは自分の分身として、肌身はなさず持ち歩き、年月を 費やした軌跡として読み返すのも楽しかったはずなのに。あー恐ろしや iPhone。10年以上続いた習慣を、あっという間に、およそ三日で変 えてしまった。

しかし今日は違う。久しぶりにモールスキンを開き、ロディアのメモも使 い、家の本棚にぞんざいに積まれたクレールフォンテーヌの鮮やかな チェックのノートも引っ張り出した。じっくりとそれらを眺めた。

片岡義男「文房具を買いに」の文庫版を読んでいたら、いても立ってもい られなくなったのだ。

モールスキン、トンボ色鉛筆、カランダッシュの水彩クレヨン、BIG のボールペンその他、様々な文房具に対する愛着を実に丁寧に、正確な文 章で、時折過去の記憶を織り交ぜながら記述していく。

その小さな文庫本の世界感が、ひかえめで、何だか孤独で、過剰な味付けをしなくとも風味豊かな和食のようで、上手く表現できないんだけど、味 わい深いんだな。

iPhoneばかりに依存してる毎日だけど、やはりノートも持ち歩こう。きっ と、直接、紙に書き付けたい言葉がまだあるはずだ。

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