アレルヤ

30歳までフリーターだった。その後結婚のため就職はしたけれど、それがなければずっとそのままだったかもしれない。

金はもちろん無いが、時間だけはあった日々。遊ぶための元気なら錬金術のごとく捻出できた。かわいい女の子を、いかした音楽を、心にしみる映画やアート、ファッションを貪欲に求めていた。意味のないおしゃべりも酒の席なら延々にできたし、自分の時給が安いのは国のせいだぜよ!なんていうばかげたことも恥ずかしくなく言ってた。そして独りになっては変化のきっかけを探し、「愛」ってなんだろう?などと思ったりしてた。迷い・逡巡し・躓き、頭を抱えて呻いていたかと思えば次の日には、俺ってラッキー?なんて小さくガッツポーズをしていたりする。くそったれな日々のなかにも甘くキラキラ瞬間が、そう瞬間なんだけど、数多くあった。

結果的には駄目な自分の物語だ。それがそのまま描かれているから、うっ・・・これは俺のストーリーじゃあないか、と思ってしまう。だから読みながら少しへこんでしまう。人生の行き止まりが見えそうになってしまうし、どう足掻いたってこの不幸を脱出できそうにないと思ってしまう。

だけどキラキラの瞬間がやってくる。この小説にもそれがある。突然転がり込んできた女の子に対する一喜一憂であったり、いきつけのバーでの遊戯であったり。そんな、当人以外にはわからない些細な心のジャンプ。だから読み終わったあとでは不思議と光が見えてくる。ふわーっと、代々木公園や井の頭公園の中から見上げる青空のようなものが。

慣れ親しんだ、ボロボロになるまで使い込んだ革のバッグや、革ジャンや、黒いブーツ(ソフィアの同名の曲、歌詞も含めて最高の青春ソングだと思う、関係ないけど)なんかと同じく、男ならジーンズのケツポケットに、女の子ならカバンの中にブックカバーもつけず無造作に放り投げて持ち歩くのが似合う本だ。

BGMは、本家ルーリードのものと迷ったけど、「女たち」という大傑作も書いてる桜井に敬意を表してバネッサのほうで。

Vanessa Paradis- Walk on the wild side (Live)