失われた愛を求めて

結婚しようよベイベー
一瞬先は闇で
未来がぼんやりでも
怯えることなど何もない

人間てむなしいもんさ
愛してるのは君だけだ
つらかった楽しかった
積もうね積もうねbaby i love


吉井和哉のソロより「tali」の一節だけど、一時期は本当に良く聴いた。人生が八方塞がりでどうにもならない時、でろでろに酔いながら一人カラオケで泣きじゃくりながら熱唱したという痛い過去も含め、ある時期においては自分のテーマソングと化していた。結婚についての歌は数あれど、この曲の世界観こそが理想だよなあと聴く度にいつも感動する。

あるアーティストを好きになると芋づる式にそのアーティストのことを知りたくなってしまうタイプの僕としてはめずらしく、イエローモンキーの活動が終了し、ソロになってから聞き始めたから、過去の活動のストックが沢山ある吉井和哉を追いかける身としては、楽しい吉井ライフが始まるぞと浮き足立ってもいいのに、なぜだか僕は吉井和哉の過去を追いかけることはせず、そのソロ作品のみをポツポツと聴くに留まる。

その吉井和哉が語り下ろしというカタチで出した自伝。アーティストにはよくある手法だけど、ゴーストライターが程良くまとめるよりはまし。彼の声がきちんと響いてくる。

小さなライブハウスから武道館に登りつめるまでの、バンドによくあるサクセスストーリーを軸に、奥さんや子供、山梨に建てた家、愛人、母親、そして沢山の女の子について自由に語る。

どんな状況であの有名曲が出来上がったのか、そしてその時の気持ちはどんなだったか。イエローモンキー、吉井和哉を代表する曲についての本人からの思い入れたっぷりの解説を読みながらその曲を聴くことの愉悦。

成功者に対してはたいてい、その成功した部分だけに着目してしまいがち。しかし成功の裏には勿論たくさんのドラマがあって、激しい。自分の人生の激しさとはカウンタックスーパーカブくらいの差があるなぁと。

全編を貫く愛への渇望。それが純粋であればあるほど周りを巻き込んだり、迷惑をかけたりしてしまう。そこから逃げずに向かい合うエネルギーを吉井和哉は持っている。男のセクシーさ全開で愛を渇望し、受け、与える。

愛に生きるってカッコいい。


BGMは吉井ソロより「tali」歌詞、メロ、展開ともに最高でかつキャッチー。
吉井ロビンソン〜Tali