フランスのブランド美学

普段図書館に行くことはめったにないけれど、月々の書籍代があまりにも嵩んできたため、今月、来月と本屋に行くのもAmazonも我慢して、図書館で本を借りている。本当は不本意なんだけどしょうがない。生きるには金がかかる、真っ先に削られるのは娯楽の部分だ。

でもって仕事帰りに、ここ郊外のショッピングモールで唯一喫煙ができるタリーズにしけこんでいるというわけ。家族、カップル、子供連れでごったがえすこの場所で土曜日に一人きりというのは、何だか、世間様のレールから外れてしまったかのような錯覚に陥るけどそれもまた人生。まあいい。ムーンライダーズの「ダイナマイトとクールガイ」を聴いて勢いをつけてやろう。

でも図書館だからこその出会いもある。昔持っていたけど何時の間にかなくなってしまった丹生谷貴志の「死者の挨拶で夜が始まる」があったり、書店にはならんでなかった青山真治の「帰り道が消えた」も発見。もちろん借りてきた。そんななかでも、新刊書店で見てもなぜかお金がもったいないような気がして中々買わないのが、海外事情系のエッセイ。鳥取絹子「フランスのブランド美学」もそのうちの一冊で、書店で見た時はトリコロールの装丁といい、可愛らしいイラストやソフトカバーが気に入って買おうかどうか迷ったのだけど、結局買わずじまいだったから、ここぞとばかりに借りてきて仕事場でコソコソと読んだ

そしたら大当たり。タイトルにあるようにフランスのブランドで、日本にも浸透しているブランド約70を簡潔な文章で紹介。もともとはNHKラジオのフランス語講座のテキストに加筆したものらしい。ひとつのブランドでだいたい4ページ。バランスもちょうど良く、このページ数なら、自分が知らないブランドや、知っていても縁のないブランド(例えば、ロクシタンやマキシムス、ショーメ、ミシュランガイドなど)の紹介もすんなり読めて、あー、そういう歴史があったんだ、とか、本国フランスではそういう位置づけなんだとか、ふむふむと読んでいける。

ミネラルウォーターの頁では、フランスではミネラルウォーターの産地には、ミネラルウォーターで病気治療を施す病院がたくさんあることを知り、モエ・エ・シャンドンの頁ではルイ15世の愛人ポンパドール夫人が(ついあのパン屋を思い出してしまいますが)「飲んだ後でも女性が美しくいられるのは、唯一、シャンパンだけ」と言った逸話を知ることができたり、ひとブランドごとに何かしら膝を打つエピソードが入っているのが、すごく得した気分。もちろん、いかにもフランス!的なブランド紹介の部分では思い切りスノッブな感じが醸し出されています。カフェ・ドゥ・マゴとかそうかな。

仕事中につきナナメ読みで済ましてしまったけれど、お気に入りのワインでも抜いてもう一度、夜の、みんなが寝静まった時刻にゆっくりと味わいたい一品です。

フランス好きはマスト!


BGMはやはりシャンソンかミュゼットかというところなのだけれども、たまたま聴いていたこいつが以外と合ったので是非に。
Dragon ash - Under Age's Song