「マイ・スタンダード」横山剣

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酔ってしまったのだ。口蓋を三歩進んで、よっ、ぱらっ、た、ー。これから黒澤明の天国と地獄と地獄を観なければならないのに、ファミリーマートのタンドリーチキンとやらを勢いで買ってしまい、それを咥えながら実家に電話して介護のあれこれを話していたらドーンっと落ちて
しまったのでエビスビールをさらに一気飲みしてやった。こうやって夜は、ロマンスの欠片もなく生活に押し潰されながらその時を刻むのだ。

当時いいなと思っていた女の子との逢瀬が山手線のある駅、坂道を上がり切ったところであって、僕の執拗なアプローチに辟易したせいだろうと思うが、俺誕生日に一人は嫌だから一所に祝ってくれ攻撃で、坂道のてっぺんで貰ったバースデイプレゼントがCKBのアルバムだった。もちろんクレイジーケンバンドくらいその名前はしっていたけど、彼女にぞっこんだった僕はCKBはチキン、コンソメ、バーベキューの略かくらいの認識しかなかったはずだけど、ああ、うれしいです!。恐ろしや恋の病。

そして無事彼女との生活も始まり、CKBのライブにも行くようになり、そのエンターテイメントぶりに、ちょっとサービスしすぎなんじゃないの?と思っていた矢先に出たのがこれなんだ。

マイ・スタンダード。タイトルがいい。そして、ぼかしとアンニュイさで武装されたジャケ写は、男子なら惚れてまうやろーっ!のテンションでどストライク。

無論CKBの音楽を聞きながら読み進めて(この頃には大ファンになっていたのです)最高最高、イイね!イイね!イイね!とクレイジーケンの口癖を真似てしまうほど良かったのだ。

前回の吉井和哉自伝の時とは違って、横山剣が自分で綴った自伝だからとにかくいろいろが細密。年号、シチュエーションやその空気感がダイレクトに伝わってくる。彼に関係した、横浜・本牧・六本木・戸塚・長者町・日吉その他の場所のリアリティーも満載で、彼の人生の奇跡を読みながらきちんと後追いできるのがいい。共感できる部分、そうでない部分と両方あるけど、年号・場所の特定がきっちりしてるだけで、読み手の道しるべになる。関係無いけど、このBlogを今書いてる最中のBGMはもちろんクレイジーケンバンドで、そこでシャッフルして流れてきたフレーズは「悩ましいな、そのお尻が、触れてたいぜ、その美尻、パッつんぱつんぱつんぱつん、パッつんぱつんぱつんぱつん」というリフレインで大爆笑だ。卑猥な感じをこれだけスポーティーに表現できるなんてなんてグレイト!尊敬してしまいます。

とはいえ、本書の中には本気なフレーズも頻出して、常に何らかの気づきを得たいと思っている僕の欲求も満たしてくれます。

「おれの場合は飯を食うためもあるけれど、誰にも邪魔されない自由な音楽環境を得るために、自分が自分のパトロンになって自分の音楽活動を支援したい、というもうひとつの目的もあったので、なるべく稼ぎのいい仕事をしたかった」

「未知の世界に身を投ずる勇気さえあれば、なんだってできる」

「音楽の自由は向こうからはやって来ない。音楽の自由は自分の力で勝ち取るものだ。そして、それが本当の自由というものだ。単純なおれは単純にそう思った。与えられた時間はみな平等で、その時間をどう消費するかも個人の自由、音楽の自由を得るために音楽以外の仕事をして金を稼いで何が悪い?ミュージシャンシップ?美学?それがなんぼのもんじゃい」

「焦らずコツコツゆっくりと・・・そんなジジ臭いことを言うには、リタイヤしてからでも遅くない。グシャグシャに散漫になって、とっちらかって、こんがらがって、混乱しまくることで、混沌とした心のジャンク・ヤードが生まれる。そこから、とっておきのパーツのアレとかコレを発掘しては楽曲に変換するのだ」

「自由をゲトれ!らしさにうもれるな!」

まあもっともっとあるけどこのへんで。弱った時には「マイ・スタンダード」ユンケルの1000倍の効果があるとい思いますね、ホンと。


BGMはCKBより、なんて濃密でエロティックでかっこイイ曲なんだとぶったまげた歌を。ホンとはもっとキャッチーでPOPなのがいいんだけど、こいつはあまりにも強烈でトラウマ化してますね。と言いたいけど動画はないので、本書を読んだ方なら
身に沁みて突き刺さるこの曲を。
Fun - クレイジーケンバンド

最新アルバムもかっこイイっす。