「街場のメディア論」内田樹

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村ランキング参加中です!

毎日ブログをチェックし、それが書籍化したら即座に買う。さらに文庫化したらそれも買う。うちの本棚にはまちがいなく内田樹のコーナーがあり、それはそこらの書店より充実している。そこまで好きな内田樹の新刊だ、図書館に入荷するまで待てない。買ってガッツリ頁の端を折りまくる。犬の耳だらけ。

今回はメディアについて。TV・出版・新聞の危機的状況を独自の視点で解明していく。大学の講義をベースにしているから語り口がやわらかい。いつものように親近感を感じる。


-目次-
第一講 キャリアは他人のためのもの
第二講 マスメディアの嘘と演技
第三講 メディアと「クレイマー」
第四講 「正義」の暴走
第五講 メディアと「変えないほうがよいもの」
第六講 読者はどこにいるのか
第七講 贈与経済と読書
第八講 わけのわからない未来

第一講から飛ばしまくる。仕事の適性・天職・潜在能力について。聞けばああその通りと頷くしかないけれど、そんなこと今まで他の誰からも聞いたことなかったよ。そうなんだそういう解説が欲しかったんだ!!


みんなの中にもともと備わっている適性とか潜在能力があって、それにジャストフィットする職業を探す、という順番ではない。まずは仕事をする。そのうちに自分の中にどんな適性や潜在能力があったのかがわかってくる。

今の僕なら、今までの社会経験で何となくだけどわかっていることだ。まずやってごらん、やっていく中で新しく、自分のやりたいことが見つかるかもしれないからさって感じで。僕も若い頃には先輩達からよく言われたような気がする。結局そのアドバイスには従わなかったけれど。だからやっぱり当時は何もわからなかったんだな。

そこからさらに就職も結婚も入れ歯も同じだよ、という話が続き、キャリア教育科目でみんなに伝えたいのはこれですと結論が伝えられる。

与えられた条件のもとで最高のパフォーマンスを発揮するように、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること。この「選択的」というところが味噌なんです。「あなたの中に眠っているこれこれの能力を掘り起こして、開発してください」というふうに仕事のほうがリクエストしてくるんです。自分のほうから「私にはこれこれができます」とアピールするんじゃない。今しなければならない仕事に合わせて、自分の能力を選択的に開発するんです。

細かくて丁寧で、またひざを打つ。ここから、自分の育児経験より「父性愛」を開発した経緯を語る。親になってみてはじめて自分に強烈な「父性愛」があったことを知るのだ。

その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。

人間が大きく変化して、その才能を発揮するのはいつだって「他者の懇請」によってである。

このような結論に辿り着き、冒頭に戻る。濃い、濃すぎる。もうこの第一講30Pだけで満足なのだ。しかし第二講から始まるマスメディアについてのあれこれがもっと凄いのだ。始めはナナメ読みしてたけど、やばいと思ってもう一度読み直している最中、熟読モードに完全に入りましたから。

ぜひみなさんの目で確かめてほしい一冊です。


BGMは濃い、濃密、男臭い田島貴男の、クドいくらいにかっこいいパフォーマンスを。腰ぶん回して踊りたくなってくるよ!!
One Way Ticket To The Blues/恋の片道切符 Neil Sedaka/Original Love