「フランス ジュネスの反乱」山本三春


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「フランス ジュネスの反乱」は2006年にフランスで起きた大規模なデモを臨場感タップリに活写した好著だ。

郊外の、かつては繁栄していた場所に建てられた団地群。バンリューとよばれるその団地エリアは、かつての繁栄の面影などなく「住民ごと捨てられた団地」と揶揄される。治安は悪く、学は低く、商店も少ない。子供たちの楽しみはサッカーだけだ。

そこに目をつけたのが当時のサルコジ内相。いいんじゃない、ここ、善と悪の構図がはっきりしててさ。もちろん悪の撤去撤廃でしょう、それでオレはヒーローになれるじゃん。そんなニヤリ声が聞こえてきそうだ。そして馬鹿みたいな数の警察を配備。異様な風景が日常に侵入してくる。わけがわからないのは地元民たち。権力に敏感なガキ達はそわそわし始める。容赦ない尋問。ただ歩いてるだけだろっ!なんだよお前ら!で苛立ちもピークに。

そして事故なんて簡単に起きてしまう。まるで始めからそのシナリオが決まっていたかのように。

入ってはいけない場所にたまたま足を踏み入れてしまった2人。まってましたとばかりに追いかける警察。夜の、おそらくは街灯など極端に少ないであろう暗がりを、追手から逃れる為に全力で疾駆する2人の視界には何も映ってなかっただろう。
たまたま飛び込んだ場所は危険きわまりない高圧電流渦巻く変電所だ。ひとりは即死。もう一人は全身大火傷ながらも家までひた走る。そして事件は明るみになりセンセーションを巻き起こす。

時近くして新しい法案がぶち上げられる。CPE法(初回雇用契約)と呼ばれるその法案は、一定の年齢までの若者を雇用した会社は、雇用から二年以内なら理由を問わず自由に解雇できるという案だ。雇用の流動化を積極的に行えば失業率も減るでしょうという言い分。

この二つの出来事により、フランス全土に大規模なデモが巻き起こる。政府に対するはっきりしたNON!のメッセージ。デモの広がり方、政治家達のうろたえる様、保身に走る様子、開き直り。正義とは何か。その様子を克明に、熱すぎる筆致でもって書き切った本書のもつ役割はすごく大きいのではないか。実はまだ最後まで読んでいない。もったいなくて、一つ一つの出来事についてを噛み締めながら読んでいるせいだ。人間なんてある程度はみんな不誠実で自分のことしか考えてないじゃん。まあそれは自分も同じだし程度の問題だと思っている。大きくずれてなきゃね、まあしょうがないでしょ、と思ってる。でもここ最近の日本の歩みには歯痒さを通り越して怒りを感じざるを得なかったので、余計にこの本にはグッときてしまったんだ。


BGMには、反乱というキーワードでいろんなパンクが思い浮んだのだが、このシニカルな曲がパッと頭をよぎったので是非に。SUEDE「we are the pigs
Suede - We Are The Pigs