「希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想」古市憲寿

ピースボート。いろんな所にポスターが貼ってありますね。世界一周とは何て魅力的な台詞でしょうか。じっくりながめたことはないにせよ、このポスターを見るたびに、あぁ全てをほっぽり出して旅に出たいなどとルサンチマンたっぷりに思うことしばしだったりします。

何か軽い読み物をと思って新書コーナーに足を踏み入れたのですが、著者名の下に「解説と反論 本田由紀」と記載されていたので気になり購入。半身浴しながら2時間で読了。

大学生の著者がピースボートに乗り込み、その出来事を克明に綴ったルポルタージュ!だったらもっと面白かったのだろうけど、本書のもとになっているのは修士論文である。そいつを編集し直して読みやすく構成したのだから、血湧き肉踊る物語とはいかない。共同体や自分探しについての考察が結構な分量ある。間にピースボートのドキュメントが挟まれている体裁だ。「夢をあきらめさせてくれない社会」について警鐘を鳴らすとともに、最後には「若者に夢をあきらめさせろ!」とまで言うようになった著者の思考の軌跡がピースボートの物語を補助線に描かれる。なので夢に満ち溢れた若者は本書を読むとがっかりするかもしれない、いや怒りを、殺意を覚えてもおかしくない。

何かを変えたくて、本当の自分を求めて、ピースボートに乗り込む若者達。理念と欲望と目的は混在し攪拌され、結局残ったのは何だったのか?

そんなことお前に言われたくねーよ!と若かりしころの僕なら言っていただろう。しかし現在に生きる四十路の自分が思うのはどこにも抜け道なんかねーよな、という袋小路感だ。ならばどう生きていくのがいいのか?その思いがぐるぐると頭をかけめぐる。

最後に引用を。

「あきらめることのできた人は幸せだ。世界平和を目指して日本でデモを繰り返したり、社会変革のために闘いを続けたり、やればできると自己啓発に励むよりも、仲の良い友達とバーベキューでも囲んでくだらない話を夜な夜な続ける方がよっぽど幸せじゃないのか。Wiiマリオパーティーをしていたほうがずっと楽しいんじゃないのか。減少した経済的資本(収入)を社会関係資本(つながり)で補う、というのは社会関係資本の増加によって経済的資本への依存から脱却したということもできる。だから、「承認の共同体」が市場を食い破るどころか、むしろ安価な労働力の供給源になってしまうとしても、僕はそれを評価したいと思う。」

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