「白鍵と黒鍵の間に」南博


菊地成孔に夢中になっていた頃に知った南博のピアノは甘く優しかった。菊地成孔パラノイアックな音楽とは対極で、たとえ実験的なリズムの曲であっても、南博のピアノは優雅なのだ。そして狂騒と静寂を行き来するように2人の曲を聴き続けた。結局両者ともに甘美なのだ。南博はバーボンの、菊地成孔ポルトワインの、それぞれトロっとした液体でこちらは酔わされる。


ー内容説明(Amazon)ー
ジャズピアニストが綴る夜の銀座の青春記
日本有数の人気ジャズ・ピアニスト、南博が綴る、爆笑と感動の青春記。真面目なクラシック・ピアニスト志望だった南青年は、ある日ふと聴いたジャズに魅せられ、人生が一変した。小岩のキャバレー、六本木のバー、そして銀座の超高級クラブでのピアニスト生活。ボスであるバンマスは海千山千のギャンブラー、ママやホステスは危険な香りを振りまく夜の蝶、そしてお客はあやしげなバブル紳士と「さる組織」の親分に幹部たち。欲望と札束が飛び交う夜の銀座で、南青年は四苦八苦しながら人生を学んでゆく。そして数年、南青年は銀座に別れを告げて、あこがれのアメリカへのジャズ留学を決意する…。
菊地成孔氏いわく、「この本は、僕のどの本より面白いです。」

一読してすぐに引き込まれた。クラブのピアニストがどういうものか知らないという好奇心もあったからかもしれない。派手な文体ではないがとにかく映像的だった。あらゆるシーンが次から次へ目に浮かぶ。

演奏が終わるたびに拍手してくれるヤクザの親分。そのゆっくりとした手の動きや、スナック独特の雰囲気やバーテンの所作、深夜になるにつれ座ったホステスの化粧が緩んできた表情など。バブル期に夜の世界で身を立てる人たちの喜怒哀楽、出会いと別れ。キーボードが足りないから来てくれと言われ、のこのこついていったらゾンビのお面をかぶったロックバンドだったこと。郊外のショッピングモールの演奏で熊のヌイグルミを着て演奏しながら、でも手だけは出ていないとピアノが弾けないからそのままにしてたらクソガキが近寄って来てからかわれたこと。

書く人によっては面白おかしく誇張するだろうが、南博はそれをしない。だけれどもにじみ出るユーモアが時々間欠的な笑を誘発する箇所がいくつも出てくる。僕にとっては極上のエンターテイメントだった。

バブル期ということで、一般のサラリーマンの3〜4倍もらっていたというギャラを貯めた南博。アメリカでジャズを勉強する為に日本を出発するシーンで本書は終わります。アメリカでの珍道中は続編でどうぞ。

【今日の一曲】
やはり本人の曲でしょうか。あまり動画がなかったので、その中でも少し変わった曲で。興味があればいろいろ聴いてみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=tSuhX4qoGwY&feature=youtube_gdata_player

そのソフトで優雅なピアノとは違った、ユーモアにあふれた、かつ読みやすい文体。でもそこはかとない悲しみもたずさえてるのですね。

こちらは続編のアメリカ留学記。まだ未読ゆえ、早速読んでみたいと思います。

↓PLEASE CLICK ME!!
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
人気ブログランキングへ
Twitter
http://twilog.org/BIBLIOTHEQUEa