「マイ・フーリッシュ・ハート」南博


昼間に南博の本を一冊読み直し、そのあまりの面白さに続編を読もうと図書館のデータを当たるも、近くの図書館には無い。

しかたなくネットで予約だけして今度は本屋に向かう。ここにも無い。

しかしさらに続編である3冊目が何時の間にか発売しているではないか。2冊目をまだ読んでないから続きを読んだらまずいだろと思うも、我慢できずにページを開く。

話はアメリカから帰国したところから始まっていた。よし。これならアメリカ時代は独立して読んでも大丈夫だろう。

そして買う前に数ページ読み始めたのが運の尽き、立ち読みから座り読みになり気づけば1時間、完全に読み切ってしまった。そして実際の涙は出ないが、僕は確実に泣いていた。


ー内容(「BOOK」データベースより)ー

日本の変貌に惑い、ライブツアーの狂騒に酔い、うつ病に苦しみ、友情に救われながら、今日もひたすらピアノを弾く。当代随一のジャズピアニストによる真摯で痛切なメモワール。

精神科医春日武彦との特別対談「ジャズとうつ」収録。

ジャズピアニスト。何てカッコいい響き。そしてこんなにダンディなんだ、散々モテるだろう。ーー私のために一曲弾いてよ。お安い御用さハニー。何て素敵なの、ここは天国じゃないかしら。ああそうさ、だけど隣の部屋にはもっと素敵な楽園が待ちかまえてるのさ。あぁ、今すぐ私を連れてってちょうだい!!ーー。そんな声が聞こえてくるようだ。

凡人の僕には羨望しかない。

しかし帰国した34歳のピアニストには何もなかった。後ろ指を指されながら実家に寄生して行うバンド活動。何の保障もないフリーランスの生活。ピアノが弾けない環境で、友人宅を転々としながらピアノの練習をさせてもらうこと。その苦労は僕らにも馴染みのある感覚だ。いつまでもうだうだしてらんないということ。そして、せっかくアメリカの音大まで出たのに何者でもない自分への苛立ち。

しかし彼の持ち前の行動力は実を結び始める。バンドを結成し、ライブをこなし少しづつ忙しくなってくる。ピアノが弾ける部屋も借りたし、150万かかったけどピアノも買った。生徒にピアノを教えながら生計を立て、精力的にライブもやる。有名になる前の綾戸智絵とチームも組んだ、菊地成孔とも運命の出会いを果たした、アメリカ時代の仲間の伝手で海外でのライブもやった(すったもんだの嵐で臨場感溢れる面白いパートです)。だけどうつ病になってしまい全ての歯車が狂い始めて・・・

波瀾万丈といえばそうだろうし、いやもっと過酷な人生を生きている人もいるだろうといえばそうかもしれない。だけどピアノを弾く以外に俺の生きる道は無い、という南博の決意、そしてジャズに対する尊敬の眼差しが心を打つ。うつ病になりながらも演奏し、日々生きている姿を想像させられながら読んでいると、つい頑張れという言葉が漏れ出てしまう。

それでも他の著作同様ユーモアもたっぷりで笑わせてくれる。デンマークから来たジャズメンたちの滞在記はまるで自分がその場に居合わせた様な臨場感だ。

そして僕も愛聴していたアルバムたちがどんな状況・精神状態・想いで制作されたのかを読むに連れまた涙腺が緩む。今はまだ外にいるので無理だが、後で家に帰ったらまずやることはAmazonのサイトから南博のアルバムをダウンロードすることだ。残念ながら手元には一枚も残ってない。そして明日届くはずの、第2冊目アメリカ留学期を楽しみにしているのだ。

【今日の2曲目】
菊地成孔とのセッションをどうぞ。そのダンディさと優しいピアノが見れるいい映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=Lh8z9hhytr0&feature=youtube_gdata_player

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