「現代詩手帖2011年12月号」


ここ数日暇さえあれば、現代詩手帖12月号を読んでいる。普段なら文芸誌の類いを精読することってほぼないのだけど、今回の現代詩年鑑2012にはがっつりとはまっている。読めば読むほど詩が身近に感じられるし、新しい詩人を探すためのよいナビゲーターになるからだ。もうすでに、今まで読んだことの無い詩人の作品も購入した。

広告や連絡先などをのぞくと約400ページ。ひたすら詩、詩、詩だ。パートは大きく分けると3つ。

<1>座談会・震災以後の詩の言葉・2011年の総展望・書評など。だいたい200ページ。
<2>詩人たちへのアンケート、今年度の収穫。約70ページ。
<3>2011年代表詩選140編。約130ページ。

僕がとくに参考にしたのが<2>のアンケートだ。

詩集や詩作品、さらに詩以外のジャンルで印象に残ったものをピックアップして理由を書く。100人ちょっとのアンケート。紹介されている詩集や作品は膨大な数になる。これだけあれば新しい詩人と出会わないわけがない。優れている作品は何人もの人が押しているので、それをたよりにしてもいいだろう。

今年いろんな賞をとった、僕も昔から好きな詩人である福間健二の詩集「青い家」。何人もがこれを押している。感想もそれぞれであり、それ自体が詩のような美しいものもたくさんあった。


・詩史における2011年という年はこの詩集によって記憶されるだろう。(秋山基夫)

・詩語に込められた圧倒的な時の量感。(添田馨)

・この詩体の「器」は途轍もなくあらゆる経験を飲み込んでしまう。(阿部嘉昭

・現代詩の空気が動いた詩集。(新井豊美

・繰り返し訪ねたい九十八の扉。(文月悠光)

・今年度最高の詩集。今後の現代詩の方向を決める詩集。それがこんな格好で現れたとは。(井川博年)

・読後、巨きな勇気を覚えた。驚いた。現代詩にはまだこのような宝物が埋蔵されていたとは・・・。本年の、のみならぬ屈指の仕事。(油井昌樹)

・九十八篇の詩を筋書きのない長編物語のように読んだ。旺盛な詩精神の発露はみずみずしく、柔軟な日常へのまなざしも魅力的だ。(原田勇男)

・詩が「生活」にも「芸術」にも偏らないようにすることと素朴にうたうことを福間さんは心がけているように見える(松本秀文)

・この家に入るたびに、熟知していたと思い込んでいたすべてが優しく壊され、他者として新しい世界へ押し出されていくような経験をするのが不思議だ。(水島英己)

・時間を上昇下降し空間を右折左折するイメージが詩を生の同義語へと昇華し、死者たちとの語らいが生を死の類義語へと収斂する。(山田兼士)

「詩が「生活」にも「芸術」にも偏らないようにすることと素朴にうたうことを福間さんは心がけているように見える」という松本秀文の一文に納得する。どの境界からが芸術なのかという問いは今はさけて、感じるままに言えばその通りだと。

僕が福間健二の詩に初めて触れたときは、あきらかに芸術的側面に反応していた。カッコいい!何だこの言葉使いは、この単語の組み合わせは、一行ごとに変化する世界観は。そのはぐらかされ方も含めて素晴らしかった。SFのような、機械的・メタリックな表現は音楽的で、いま考えるとソリッドな疾走するロックそのものだった。そして他の詩集を紐ときながら、いやいやカッコいいだけではないぞ、生活があるぞ、歴史として重なってるぞ、あら別離だ、青春だ、逡巡だ、うーん傷ついてるねぇ、などと感じる詩にたくさん出会う。そして結局はどちらのラインも好きになり今にいたる。今回の詩集は、僕的にはやや「生活」寄りかなと思うが、何度も読むうちにまた違う印象を持ち始めた。そうすると「素朴にうたうことを心がけているような」という部分に膝をうつ。素朴だけど、やはりあきらめられないという迷いと決意が静かに生活の中からにじみ出ている。

その他にも、八柳李花、タケイ・リエ、暁方ミセイ、野村喜和夫、橘上、高貝弘也、今井義行、一方井亜稀、和合亮一などの詩集がたくさんの人に取り上げられていました。八柳李花の詩集はもう買っていて、その硬質なイメージに教会のステンドグラスのイメージを重ねながら読みました。こちらも素晴らしい。

そしてメインである各人の詩、140篇。おびただしい言葉の奔流。圧縮された表現、のびのびとした記述、ほんとうに様々で、目が回る。幼い頃に公園の地球儀みたいな回転体で延々回っていたことを思い出す。もちろん嬉しい夢中として。ざっと印象に残ったものを列挙してみます。

「寝室にて。」三角みづき
「乳白色の空」井坂洋子
「わが父の教えたまいし歌」季村敏夫
「ゆれるな」平田俊子
「総量」木坂涼
「少年期」朝吹亮二
「言葉」谷川俊太郎
ガラパゴス」新井高子
「あめりか」橘上
「わたしたちの冬」福間健二
「海は近い(抄)」江夏名枝
「祈りの夜」山崎佳代子

他の詩編からも様々なインスピレーションをもらいました。瞬間と永遠、そして道程、過程。詩を読むことは、こちらの感受性をジャッジされているような気分になり、僕にとってはそれが心地いいのです。


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